導入
技術士第一次試験の機械部門では、静力学・材料力学の計算問題がよく出題されます。
特に、トラス構造の反力・軸力計算、オイラーの座屈荷重、断面二次モーメントは、機械設計の基礎としても重要なテーマです。
ただし、これらの問題は公式を丸暗記するだけでは対応しにくい場合があります。
大切なのは、問題文や図を見て、
- どの力が作用しているか
- どのつり合い式を使うか
- どの公式を使えばよいか
- 計算を省略できるポイントはないか
を判断できるようになることです。
この記事では、機械設計初心者や技術士第一次試験の受験者向けに、静力学・材料力学の頻出テーマをわかりやすく整理します。
目次
- 静力学・材料力学が技術士第一次試験で重要な理由
- トラス構造の反力と軸力の基本
- トラス問題で役立つゼロ部材の見つけ方
- オイラーの座屈荷重の公式と覚え方
- 断面二次モーメントの意味と代表公式
- 試験で計算ミスを減らすポイント
- FAQ
- まとめ
静力学・材料力学が技術士第一次試験で重要な理由
静力学・材料力学は、機械設計や構造設計の基礎になる分野です。
静力学では、物体に働く力がつり合っている状態を扱います。
材料力学では、部材に力が加わったときの応力、変形、曲げ、座屈などを扱います。
技術士第一次試験では、これらの知識を使って、限られた時間内に計算問題を解く力が求められます。
よく出題されるテーマ
静力学・材料力学では、次のようなテーマが出題されやすいです。
- 力のつり合い
- モーメントのつり合い
- トラス構造の支点反力
- トラス部材の軸力
- オイラーの座屈荷重
- 断面二次モーメント
- 断面形状による曲げ剛性の違い
これらは単体で出題されることもあれば、複数の考え方を組み合わせて問われることもあります。
初心者がまず意識したいこと
初心者の場合、最初から複雑な計算に取り組むよりも、まずは次の3点を意識すると理解しやすくなります。
- 力はつり合っているか
- モーメントはどの点まわりで考えるか
- 公式の中で、どの値が大きく効くか
試験では、すべてを細かく計算しなくても、比例関係や代表公式を理解していれば解ける問題もあります。
トラス構造の反力と軸力の基本
トラス構造とは、複数の部材を三角形に組み合わせた構造です。
橋、クレーン、屋根構造などでよく使われます。
トラス問題では、一般的に各部材には曲げモーメントではなく、軸力が作用すると考えます。
軸力とは、部材の軸方向に働く力のことです。
部材を引っ張る力であれば引張力、押し縮める力であれば圧縮力と呼びます。

図1:トラス構造では、外力に対して支点反力が発生します。まず全体のつり合いを確認します。
トラス計算の基本手順
トラス構造の問題では、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 支点の種類を確認する
- 外力の大きさと向きを確認する
- 構造全体のつり合いから支点反力を求める
- 求めたい部材を含む部分を切り出す
- 力のつり合いから部材の軸力を求める
いきなり部材ごとの力を求めようとすると、未知数が多くなり混乱しやすくなります。
まずは構造全体を1つの物体として見て、支点反力を求めるのが基本です。
支点反力とは
支点反力とは、支点が構造物を支えるために発生する力のことです。
たとえば、トラスに下向きの荷重がかかると、支点には上向きの反力が発生します。
水平方向の力がある場合は、水平方向の反力も考える必要があります。
静力学では、次の3つのつり合い条件をよく使います。
それぞれの意味は次の通りです。
- :水平方向の力のつり合い
- :鉛直方向の力のつり合い
- :モーメントのつり合い
切断法とは
切断法とは、求めたい部材を含むようにトラスを仮想的に切断し、片側だけを取り出して力のつり合いを考える方法です。
トラス全体を接点ごとに計算していく方法もありますが、試験では時間がかかる場合があります。
求めたい部材が明確な場合は、切断法を使うと計算を短縮できることがあります。
切断法では、次のように考えます。
- 求めたい部材を通るように切断する
- 切断した片側だけを見る
- 外力、反力、切断した部材の軸力を図に書く
- 力やモーメントのつり合い式を立てる
特にモーメントのつり合いを使うと、不要な未知数を消せる場合があります。
トラス問題で役立つゼロ部材の見つけ方
トラス問題では、計算しなくても軸力が0と判断できる部材があります。
これをゼロ部材と呼びます。
ゼロ部材を見つけられると、計算する部材数が減り、試験時間の短縮につながります。

図2:外力が作用していない接点では、条件によってゼロ部材を判断できる場合があります。
ゼロ部材とは
ゼロ部材とは、特定の荷重条件で軸力が0になる部材のことです。
つまり、その条件では引張力も圧縮力も発生していない状態と考えます。
ただし、ゼロ部材は「不要な部材」という意味ではありません。
実際の構造では、荷重条件が変わった場合の安定性や、組立上の理由で必要になることがあります。
よくあるゼロ部材のパターン
代表的なパターンの1つは、次のような接点です。
- 一直線上に2本の部材がつながっている
- その接点に、もう1本の部材がT字型に接続している
- その接点に外力や支点反力が作用していない
この場合、T字型に接続している部材はゼロ部材になることがあります。
外力がない接点で、一直線方向の2本の部材だけで力がつり合う場合、直角方向に接続した部材には力が流れないと考えるとイメージしやすいです。
ゼロ部材を探すタイミング
トラス問題では、最初に全体を見た段階でゼロ部材を探すのがおすすめです。
次の順番で確認すると効率的です。
- 外力が作用していない接点を探す
- 部材が2本または3本集まっている接点を見る
- 一直線上の部材があるか確認する
- ゼロ部材になりそうな部材を除外する
ゼロ部材を早めに見つけることで、その後の計算が楽になる場合があります。
オイラーの座屈荷重の公式と覚え方
座屈とは、細長い柱に圧縮荷重が加わったとき、柱が横方向に曲がって不安定になる現象です。
材料そのものが破断していなくても、柱が大きく曲がることで構造物としての機能を失う場合があります。
オイラーの座屈荷重とは
オイラーの座屈荷重は、細長い柱が座屈し始める限界の荷重を表します。
基本式は次の通りです。
各記号の意味は次の通りです。
- :座屈荷重
- :縦弾性係数
- :断面二次モーメント
- :柱の長さ
- :端末条件による係数
この式から、座屈荷重は材料、断面形状、柱の長さ、端部の固定条件によって変わることがわかります。
長さの2乗に反比例する
オイラーの座屈荷重で特に重要なのは、柱の長さ が分母にあり、しかも2乗で効くことです。
つまり、柱が長くなるほど座屈しやすくなります。
たとえば、他の条件が同じで柱の長さが2倍になると、座屈荷重は次のようになります。
つまり、座屈荷重は4分の1になります。
試験では、このような比例関係を問う問題も出題されやすいため、公式の形だけでなく意味も覚えておくと便利です。
端末条件による係数
座屈荷重は、柱の端がどのように支持されているかによって変わります。
この条件を端末条件と呼びます。

図3:端末条件によって座屈荷重は変わります。固定度が高いほど座屈しにくくなります。
代表的な係数は次の通りです。
- 両端回転フリー、ピン支持:(n = 1)
- 一端固定・一端自由、片持ち:(n = 0.25)
- 一端固定・他端ピン支持:(n 2)
- 両端固定:(n = 4)
一般に、端部がしっかり固定されているほど座屈しにくくなります。
逆に、一端固定・一端自由の片持ち柱は座屈しやすい条件です。
座屈問題で確認すること
座屈問題が出たら、まず次の点を確認します。
- 柱は細長いか
- 圧縮荷重を受けているか
- 端末条件はどうなっているか
- 長さ、縦弾性係数、断面二次モーメントが与えられているか
- 比例関係を問われているのか、数値計算を問われているのか
特に、長さや端末条件が変わったときに座屈荷重が何倍になるかを問う問題では、公式の全体を計算しなくても解ける場合があります。
断面二次モーメントの意味と代表公式
断面二次モーメントは、部材の曲がりにくさを表す指標です。
材料力学では、曲げ応力、たわみ、座屈荷重などに関係します。
同じ材料でも、断面形状や向きによって曲がりにくさは大きく変わります。
断面二次モーメントとは
断面二次モーメントは、断面の形が曲げに対してどれだけ有利かを示す値です。
値が大きいほど、一般には曲げにくい断面と考えられます。
ただし、どの軸まわりに曲げるかによって値が変わるため、断面の向きにも注意が必要です。
長方形断面の公式
長方形断面の断面二次モーメントは、代表的に次の式で表されます。
各記号の意味は次の通りです。
- :幅
- :高さ
ここで重要なのは、高さ が3乗で効くことです。

図4:長方形断面では、高さ方向を大きく取ると断面二次モーメントが大きくなります。
同じ断面積でも、高さ方向を大きく取ると断面二次モーメントが大きくなり、曲がりにくくなります。
試験では、長方形断面を縦置きにした場合と横置きにした場合で、どちらが曲がりにくいかを問う問題が出ることがあります。
円形断面の公式
円形断面の断面二次モーメントは、次の式で表されます。
- :直径
円形断面では、直径 が4乗で効きます。
たとえば、直径が2倍になると、断面二次モーメントは次のようになります。
つまり、断面二次モーメントは16倍になります。

図5:円形断面では、直径が2倍になると断面二次モーメントは16倍になります。
このように、断面寸法が少し変わるだけでも、曲げにくさに大きく影響することがあります。
試験で計算ミスを減らすポイント
静力学・材料力学の問題では、考え方が合っていても、符号や単位のミスで誤答になることがあります。
特に試験本番では時間が限られているため、解き方の流れを決めておくことが大切です。
図に力を書き込む
問題文を読んだら、まず図に力を書き込みます。
- 外力
- 支点反力
- 部材の軸力
- モーメントを取る点
これらを図に整理するだけで、式を立てやすくなります。
頭の中だけで考えると、力の向きや符号を間違えやすくなります。
単位をそろえる
材料力学では、単位の扱いが重要です。
たとえば、長さがmmで与えられているのに、別の値がmで与えられている場合、そのまま計算すると間違える可能性があります。
計算前に、次のような単位をそろえておくと安心です。
- N
- mm
- MPa
- N/mm²
特に縦弾性係数や断面二次モーメントを使う問題では、単位の整合性に注意しましょう。
公式を意味で覚える
公式は覚える必要がありますが、丸暗記だけでは対応しづらい問題もあります。
たとえば、オイラーの座屈荷重では、次の関係を理解しておくと便利です。
- 長さが長いほど座屈荷重は小さくなる
- 断面二次モーメントが大きいほど座屈しにくい
- 端部が固定されるほど座屈しにくい
断面二次モーメントでも、次のような見方ができます。
- 長方形断面は高さの3乗が重要
- 円形断面は直径の4乗が重要
- 断面の向きによって曲がりにくさが変わる
公式の意味を理解しておくと、選択肢を絞りやすくなります。
時短できる問題を見分ける
試験では、すべてを丁寧に計算すると時間が足りなくなる場合があります。
次のような問題は、計算を短縮できる可能性があります。
- 比例関係だけで答えられる問題
- ゼロ部材を見つければ未知数が減る問題
- 対称性を使える問題
- 端末条件の係数だけを比較すればよい問題
「本当に最後まで計算する必要があるか」を考えることも、試験対策では重要です。
FAQ
トラス構造の反力計算は何から始めればよいですか?
まずは構造全体を1つの物体として見て、支点反力を求めます。
水平方向、鉛直方向、モーメントのつり合いを使うのが基本です。
支点反力を求めたあとで、必要な部材の軸力を求める流れにすると整理しやすくなります。
トラスのゼロ部材は必ず出題されますか?
必ず出題されるとは限りません。
ただし、ゼロ部材は計算を短縮できる重要な考え方なので、典型パターンは覚えておくと有利です。
特に、外力が作用していない接点に注目すると見つけやすくなります。
オイラーの座屈荷重で一番重要なポイントは何ですか?
柱の長さが2乗で効く点が重要です。
この式から、長さが2倍になると座屈荷重は4分の1になることがわかります。
試験では、この比例関係を問われることがあります。
断面二次モーメントは何を表していますか?
断面二次モーメントは、部材の曲がりにくさを表す指標です。
値が大きいほど、一般には曲げに対して強い断面と考えられます。
ただし、どの軸まわりに曲げるかによって値が変わるため、断面の向きにも注意が必要です。
長方形断面はなぜ縦置きのほうが曲がりにくいのですか?
長方形断面の断面二次モーメントは、次の式で表されます。
高さ (h) が3乗で効くため、高さ方向を大きく取ると断面二次モーメントが大きくなります。
そのため、同じ部材でも縦置きにしたほうが曲がりにくくなる場合があります。
技術士第一次試験では公式を暗記すれば解けますか?
公式の暗記は必要ですが、それだけでは不十分な場合があります。
公式の意味や、どの条件で使うのかを理解しておくことが大切です。
特に、トラス、座屈、断面二次モーメントでは、問題文や図から条件を読み取る力が重要です。
まとめ
静力学・材料力学は、技術士第一次試験の機械部門で重要な分野です。
特に、トラス構造、オイラーの座屈荷重、断面二次モーメントは頻出テーマとして押さえておきたい内容です。
今回のポイントを整理します。
- トラス問題は、まず支点反力を求める
- 軸力を求めるときは、接点法や切断法を使う
- ゼロ部材を見つけると計算を短縮できる
- オイラーの座屈荷重は、柱の長さの2乗に反比例する
- 端末条件によって座屈荷重は大きく変わる
- 断面二次モーメントは、部材の曲がりにくさを表す
- 長方形断面では高さの3乗、円形断面では直径の4乗が効く
静力学・材料力学の計算問題は、最初は難しく感じるかもしれません。
しかし、基本のつり合い式と代表公式の意味を理解すれば、少しずつ解ける問題が増えていきます。
試験対策では、公式を覚えるだけでなく、図を見て条件を整理する練習を重ねることが大切です。


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