導入
技術士第一次試験のプロジェクト管理では、アローダイアグラムの計算方法やクリティカルパスの求め方が問われることがあります。
アローダイアグラムは、作業の順序や所要日数を図で整理する手法です。
一見すると複雑に見えますが、基本ルールを押さえれば、初心者でも計算問題に対応しやすくなります。
特に重要なのは、次の3点です。
- 作業時間を順番に足していく
- 複数の作業が合流する地点では最大値を採用する
- クリティカルパスはプロジェクト全体の所要日数を決める最長経路である
この記事では、アローダイアグラムの基本、計算手順、クリティカルパスの求め方を例題付きで解説します。
あわせて、プロジェクト管理で重要なPDCAサイクルとの関係も整理します。
目次
- アローダイアグラムとは
- アローダイアグラムで使う基本用語
- アローダイアグラムの計算手順
- 例題で学ぶクリティカルパスの求め方
- PDCAサイクルとプロジェクト管理の関係
- 試験で間違えやすいポイント
- よくある質問
- まとめ
アローダイアグラムとは
アローダイアグラムの意味
アローダイアグラムとは、プロジェクトに含まれる作業の順序や依存関係を、丸と矢印で表した図です。
一般的には、次のように表します。
- 丸:結合点、作業の区切り、マイルストーン
- 矢印:作業
- 矢印の横の数字:作業にかかる日数や時間
プロジェクトには、複数の作業が並行して進む場合があります。
そのため、単純にすべての作業時間を足すだけでは、全体の完了日数を正しく求められません。
アローダイアグラムを使うことで、どの作業が先に必要なのか、どの作業が遅れると全体に影響するのかを整理できます。
PERT図との関係
アローダイアグラムは、PERT図と近い意味で扱われることがあります。
PERTは、Program Evaluation and Review Techniqueの略で、プロジェクトの作業順序や所要時間を分析するための手法です。
試験対策では、まず次のように理解しておくとよいでしょう。
- アローダイアグラム:作業の流れを矢印で表す図
- PERT図:作業時間や順序をもとにプロジェクトを分析する図
- クリティカルパス:プロジェクト全体の所要時間を決める最長経路
厳密な違いを深追いするよりも、試験では図を読んで計算できることが重要です。
アローダイアグラムで使う基本用語
結合点とは
結合点とは、アローダイアグラム上の丸で表される部分です。
作業の開始点や終了点、複数の作業が合流する地点などを表します。
結合点そのものは作業ではなく、あくまで作業の区切りと考えると理解しやすいです。
作業とは
作業とは、矢印で表されるタスクのことです。
たとえば、設計、準備、製造、確認、修正などが作業にあたります。
アローダイアグラムでは、それぞれの作業に所要日数が設定されます。
例:
| 作業 | 所要日数 |
|---|---|
| A | 3日 |
| B | 4日 |
| C | 5日 |
このように、各作業にかかる時間をもとに、プロジェクト全体の完了日数を計算します。
最早結合点時刻とは
最早結合点時刻とは、ある結合点に最も早く到達できる時刻のことです。
スタート地点から順番に作業時間を足して求めます。
ただし、複数の作業が1つの結合点に合流する場合は注意が必要です。
合流点では、すべての前作業が終わらないと次の作業に進めません。
そのため、合流点では到達時刻のうち最も大きい値を採用します。
クリティカルパスとは
クリティカルパスとは、プロジェクト全体の完了日数を決める最長の作業経路です。
ここで注意したいのは、クリティカルパスは「最短経路」ではないという点です。
プロジェクトは、最も時間がかかる経路が終わらない限り完了しません。
そのため、最も長い経路が全体の完了日数を決めます。
クリティカルパス上の作業が遅れると、プロジェクト全体の完了も遅れる可能性があります。
アローダイアグラムの計算手順
スタートから順に作業時間を足す
アローダイアグラムの計算では、まずスタート地点を0日として考えます。
そこから、矢印に書かれた作業時間を足していきます。
たとえば、結合点1から結合点2へ進む作業Aが3日であれば、結合点2の最早結合点時刻は3日です。
結合点1:0日
作業A:3日
結合点2:3日
基本はこのように、前から順番に足し算していきます。
合流点では最大値を採用する
アローダイアグラムで特に間違えやすいのが、合流点の計算です。
複数の作業が1つの結合点に集まる場合、早く終わった作業があっても、遅い作業が終わるまでは次へ進めません。
そのため、合流点では最大値を採用します。
例:
ルートAから到達:8日
ルートBから到達:6日
この場合、合流点の最早結合点時刻は8日です。
理由は、6日で到達できる作業があっても、8日かかる作業が終わらなければ次に進めないからです。
最長経路をクリティカルパスとして判断する
各経路の所要日数を計算したら、最も長い経路を探します。
その最長経路がクリティカルパスです。
クリティカルパスは、プロジェクト全体の最短完了日数を決める重要な経路です。
この経路上の作業に遅れが出ると、全体のスケジュールにも影響します。
例題で学ぶクリティカルパスの求め方
例題の条件
次の作業で構成されるプロジェクトについて、最短完了日数とクリティカルパスを求めます。
| 作業 | 開始結合点 | 終了結合点 | 所要日数 |
|---|---|---|---|
| A | 1 | 2 | 3日 |
| B | 1 | 3 | 4日 |
| C | 2 | 4 | 5日 |
| D | 3 | 4 | 2日 |
| E | 4 | 5 | 3日 |
| F | 3 | 5 | 4日 |
アローダイアグラムの図
以下のような流れになります。

最早結合点時刻を計算する
まず、スタート地点である結合点1を0日とします。
結合点1:0日
次に、結合点2と結合点3を求めます。
結合点2:0 + A 3日 = 3日
結合点3:0 + B 4日 = 4日
次に、結合点4を求めます。
結合点4には、次の2つのルートから作業が合流します。
結合点2 → 結合点4:3 + C 5日 = 8日
結合点3 → 結合点4:4 + D 2日 = 6日
合流点では最大値を採用するため、結合点4の最早結合点時刻は8日です。
結合点4:最大値 8日
最後に、結合点5を求めます。
結合点5には、次の2つのルートがあります。
結合点4 → 結合点5:8 + E 3日 = 11日
結合点3 → 結合点5:4 + F 4日 = 8日
結合点5にも複数の到達ルートがあるため、最大値を採用します。
結合点5:最大値 11日
したがって、このプロジェクトの最短完了日数は11日です。
経路ごとの所要日数を比較する
次に、経路ごとの所要日数を確認します。
| 経路 | 作業 | 所要日数 |
|---|---|---|
| 1 → 2 → 4 → 5 | A + C + E | 3 + 5 + 3 = 11日 |
| 1 → 3 → 4 → 5 | B + D + E | 4 + 2 + 3 = 9日 |
| 1 → 3 → 5 | B + F | 4 + 4 = 8日 |
最も長い経路は、次の経路です。
1 → 2 → 4 → 5
作業で表すと、次のようになります。
A → C → E
したがって、クリティカルパスはA → C → Eです。
例題の答え
この例題の答えは、次のとおりです。
最短完了日数:11日
クリティカルパス:A → C → E
ここで重要なのは、クリティカルパスが「最も短い経路」ではなく、最も長い経路であるという点です。
プロジェクト全体は、最も時間がかかる経路が終わるまで完了できません。
そのため、最長経路がプロジェクト全体の完了日数を決めます。
PDCAサイクルとプロジェクト管理の関係
PDCAサイクルとは
PDCAサイクルとは、業務やプロジェクトを継続的に改善するための考え方です。
PDCAは、次の4つの頭文字を取ったものです。
| 項目 | 意味 | 内容 |
|---|---|---|
| Plan | 計画 | 目標や作業計画を立てる |
| Do | 実行 | 計画に沿って作業を進める |
| Check | 確認 | 結果や進捗を確認する |
| Act | 改善 | 問題点を見直し、改善する |
プロジェクト管理では、計画を立てるだけでは不十分です。
実行しながら進捗を確認し、必要に応じて改善することが求められます。
アローダイアグラムとPDCAの使い分け
アローダイアグラムとPDCAサイクルは、どちらもプロジェクト管理に関係しますが、役割が異なります。
アローダイアグラムは、主に計画段階で使われます。
作業の順序や所要時間を整理し、スケジュールを見える化するための手法です。
一方、PDCAサイクルは、プロジェクトを進めながら改善するための考え方です。
整理すると、次のようになります。
| 項目 | 主な役割 |
|---|---|
| アローダイアグラム | 作業順序や所要時間を整理する |
| クリティカルパス | 全体の所要日数に影響する重要経路を把握する |
| PDCAサイクル | 計画、実行、確認、改善を繰り返す |
アローダイアグラムで計画を立て、進行中はPDCAサイクルで管理・改善していくと考えると理解しやすいです。
試験対策での覚え方
技術士第一次試験では、用語を単独で覚えるだけでなく、プロジェクト管理の流れの中で理解しておくことが大切です。
たとえば、次のように整理できます。
Plan:アローダイアグラムなどで計画を立てる
Do:計画に沿って作業を実行する
Check:進捗や遅れを確認する
Act:遅れや問題点に対して改善策を取る
このように、アローダイアグラムはPDCAのPlanに関係する手法として考えると、全体像をつかみやすくなります。
試験で間違えやすいポイント
合流点で小さい値を選んでしまう
アローダイアグラムの計算で特に多いミスが、合流点で小さい値を選んでしまうことです。
しかし、合流点ではすべての前作業が完了していなければ次に進めません。
そのため、最早結合点時刻を求めるときは、必ず最大値を採用します。
到達時刻が8日と6日の場合
正解:8日
早く到達できる6日ではなく、遅いほうの8日を使う点に注意しましょう。
クリティカルパスを最短経路と勘違いする
クリティカルパスは、最短経路ではありません。
クリティカルパスは、プロジェクト全体の完了日数を決める最長経路です。
「クリティカル」という言葉から、重要な道という意味では正しいですが、計算上は最も長い経路を探す必要があります。
作業の依存関係を見落とす
アローダイアグラムでは、作業時間だけでなく、作業のつながりを見ることが重要です。
同じ作業時間でも、どの作業がどの作業の後に来るかによって、全体の完了日数が変わります。
図を見るときは、次の点を確認しましょう。
- どこからスタートするか
- どの作業が並行しているか
- どこで作業が合流するか
- 最後にどの結合点へ到達するか
PDCAを順番だけで覚えてしまう
PDCAサイクルは、Plan、Do、Check、Actの順番を覚えるだけでは不十分です。
試験では、どの場面がCheckにあたるのか、どの対応がActにあたるのかを判断する問題が出る可能性があります。
そのため、次のように意味まで理解しておきましょう。
- Plan:計画を立てる
- Do:実行する
- Check:結果や進捗を確認する
- Act:改善する
プロジェクト管理では、計画を立てたあとも、進捗を確認しながら改善していくことが重要です。
よくある質問
アローダイアグラムとは何ですか?
アローダイアグラムとは、プロジェクトの作業順序や依存関係を矢印で表した図です。
丸で結合点を表し、矢印で作業を表します。
作業にかかる時間をもとに、プロジェクト全体の所要日数やクリティカルパスを求めるために使われます。
アローダイアグラムの合流点ではなぜ最大値を使うのですか?
合流点では、複数の前作業がすべて完了してから次の作業に進むためです。
早く終わった作業があっても、遅い作業が残っていれば次に進めません。
そのため、最早結合点時刻を求めるときは、到達時刻のうち最大値を採用します。
クリティカルパスとは何ですか?
クリティカルパスとは、プロジェクト全体の完了日数を決める最長の作業経路です。
この経路上の作業が遅れると、プロジェクト全体の完了も遅れる可能性があります。
そのため、プロジェクト管理では特に注意して管理する必要があります。
クリティカルパスは最短経路ですか?
いいえ、クリティカルパスは最短経路ではありません。
クリティカルパスは、プロジェクト全体の完了日数を決める最長経路です。
試験でも間違えやすいポイントなので、「クリティカルパス=最長経路」と覚えておくとよいです。
アローダイアグラムとPERT図は同じですか?
厳密には使われ方に違いがある場合もありますが、試験対策では近い意味で扱われることが多いです。
どちらも、作業の順序や所要時間を整理し、プロジェクト全体の流れを把握するために使われます。
技術士第一次試験では何を優先して覚えるべきですか?
まずは、次のポイントを優先して覚えるとよいです。
- アローダイアグラムは作業の順序を表す図である
- 作業時間はスタートから順に足していく
- 合流点では最大値を採用する
- クリティカルパスは最長経路である
- PDCAサイクルは計画、実行、確認、改善の流れである
特に、合流点で最大値を選ぶことと、クリティカルパスが最長経路であることは重要です。
まとめ
アローダイアグラムは、プロジェクトの作業順序と所要時間を整理し、全体の完了日数を求めるための重要な手法です。
技術士第一次試験のプロジェクト管理では、アローダイアグラム、クリティカルパス、PDCAサイクルを関連づけて理解しておくと、問題に対応しやすくなります。
この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。
- アローダイアグラムは作業の流れを矢印で表す
- 最早結合点時刻はスタートから順に足し算する
- 複数の作業が合流する地点では最大値を採用する
- クリティカルパスはプロジェクト全体の所要日数を決める最長経路である
- PDCAサイクルは、計画、実行、確認、改善を繰り返す考え方である
例題では、最短完了日数は11日、クリティカルパスはA→C→Eでした。
アローダイアグラムの計算問題では、作業時間だけでなく、作業の依存関係を正しく読むことが大切です。
まずは基本ルールを押さえ、例題を使って計算に慣れておきましょう。


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